植物豆知識の頁 32

セイタカアワダチソウのアレロパシー(他感作用)


セイタカアワダチソウに侵略されているススキ

 
セイタカアワダチソウの拡散

セイタカアワダチソウの根には植物の発芽・成長を阻害する物質が含まれており、それを分泌することに

よって周囲の植物を侵略するのだそうです。このようなはたらきをアレロパシー( allelopathy「お互い

に」と「感じる」意味のギリシャ語を組み合わせた造語で他感作用と訳されている)と言うのだそうです。

この物質の化学的構造も解明されています。これはセイタカアワダチソウが破竹の勢いで我が国に広がっ

た理由のひとつですが、他にも広がる要素を備えています。ある資料によるとセイタカアワダチソウは1

本で5万個もの種を作り、しかも1uに100本と言う大変な密度で生えるので1uには500万個にも

及ぶことになります。これが風によっていたるところに散布されるのです。これが秋の野原を黄色の世界

になってしまうのではないかと思うほどの広がりの秘密なのです。昔からの秋の風情、ススキの原もその

制圧を受け様変わりをしています。

セイタカアワダチソウの自家中毒

この繁殖力でたちまちセイタカアワダチソウの天下になってしまいそうです。しかし、自然の仕組み摂理

は上手くできているものでセイタカアワダチソウの持つアレロパシー(他感作用)はセイタカアワダチソ

ウにも作用するのだそうです。いわゆる自家中毒を起こして繁殖がコントロールされるのです。心配され

たほどの広がりを見せていない理由のひとつはここにあるのです。

セイタカアワダチソウを覆うようにはびこるクズ

 
セイタカアワダチソウに待ったをかける在来の植物、クズ

さらに在来の植物、クズがセイタカアワダチソウに待ったをかける繁殖を見せています。クズのつるがよ

く伸びることは知られることだと思います。このクズの根がセイタカアワダチソウの分泌物の届かないと

ころにあればアレロパシー(他感作用)も何のその、その影響は受けません。クズに覆われたセイタカア

ワダチソウはその重みと光を奪われたことによって成長ができなくなり滅んでしまいます。

ススキとクズは・・・

 
一方ススキとクズの互いの繁殖は昔から見られた姿だと思います。クズがつるを伸ばして広がってもスス

キは背の高い葉をその隙間から伸ばしてさほどの影響を受けていないように思います。

他の植物でのアレロパシー(他感作用)

アレロパシー(他感作用)はセイタカアワダチソウだけが持つ特有の作用ではないそうでしていくつかの

植物にもその作用があることがわかっています。このはたらきは農作物の雑草をおさえるはたらきやその

作用のある植物を休耕田に植えて景観保全に利用するなどの研究も進められているようです。また、イネ

にもこの物質が見つかっており、この品種改良によって除草剤のいらない稲作も夢ではない時が来るかも

知れません。
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