第31話 コイルとソレノイド
    右巻コイルとか左巻きコイルと言いますが、本来コイルには右巻きも左巻きもありませ

  ん。なぜならば通常私たちがコイルと呼ぶものは正しくはソレノイド(solenoid線輪筒)

  と呼ぶべきものなのです。では、コイルとは何かと言いますと、(coil)渦巻き、とぐろ

  巻きのことなのです。例をあげれば蚊取り線香です。蚊取り線香は右巻きですか、左巻き

  ですかと聞かれたら何と答えますか。

   答えはどちらでもよいのです。右巻きに見える蚊取り線香もひっくり返せば左巻きに見

  えるのです。この類がコイルなのです。ところが一方のソレノイドは針金などの線の輪が

  連続して筒状になっているもの、通常コイルと呼んでいるものなのです。これは右巻きの

  ものと左巻きのものに別れます。

   でも、コイルになるとそうはいきません。右巻きのコイルはひっくり返してもやはり右

  巻きなのです。蚊取り線香のような一つの平面上で巻いているものはコイルではありませ

  ん。何時からかはわかりませんが、日本語のコイルはソレノイドも含めた呼び名になって

  しまったのです。


32話 キュウリのまきヒゲ
   キュウリにはつるを伸ばして支柱などにからみつくためのまきヒゲがあります。まきヒ

  ゲは他のつる性植物などにも共通なのですが、接触の刺激を受けるとその部分の生長が遅

  くなり、結果として巻きつくことになります。巻きついたキュウリのまきヒゲはバネのよ

  うに巻き巻きになっていますが、よく観察をすると巻き巻きは同一方向ではなく真ん中付

  近で逆巻きになっています。なぜかおわかりですか。それは、つぎのような理由によりま

  す。風が吹いたときこの巻き巻きの部分に力がかかって伸ばされます。もし、同一方向の

  巻き巻きだとすると伸ばされたときに巻き巻きを解消する向きにねじれの力が生じます。

  しかし、真ん中付近を境に異なる巻き巻きになっているとこのねじれの力が相殺されるの

  です。そのことによってまきヒゲに無駄な損傷を起こさないようになっているのです。自

  然のしくみは実に巧妙にできているものだと感心しますね。


33話 冬眠と夏眠
   変温動物のカエルやヘビ、定温動物の熊やリスが冬に冬眠することはだれでも知ってい
  
  ることだと思います。冬枯れの植物も根や種子で冬眠していると言えるでしょう。みなさ
  
  んは秋のお彼岸の頃になると田のあぜや堤防に真っ赤な花を咲かせるヒガンバナを知って

  いると思います。さて、このヒガンバナの葉を見たことがありますか。花の咲いている時

  期には葉はありません。花が散ってからニョキニョキと緑の濃い葉が出てきます。この葉

  は冬でも枯れません。冬だからこそ元気なのです。春になり、野山の草花が一斉に開花す

  るころには枯れてしまいます。暑さの夏は地中でじっと秋の到来を待つのです。冬眠に対

  する夏眠なのです。キツネノカミソリや水仙なども同じです。


第34話 ウェーバーの法則
   昔、生物学の教科書か何かにウェーバーの法則が載っていたと思います。ヒトが外界か

  らの刺激を受け、その刺激の変化を認知するとき元の刺激が大きければ大きいほど刺激の

  変化量が大きくなければ認知できないという法則です。

   例えば、水の入ったバケツをさげてその重さを感じとってもらいます。その後、水を追

  加していきます。水が追加されて重くなったと感じるまでの水の量は、はじめに入れてあ

  った水の量で違ってきます。はじめの水の量が多いほど、重くなったと感じるまでの水の

  量が多くなります。

   この法則は日常生活のいろいろな場面にも当てはまります。もし、あなたの教室のゴミ

  箱にいつもゴミが詰まっているとします。するとそれが常であって少しぐらいの増えかた

  では気にならなくなります。きれいに整頓された部屋のきれいにされたゴミ箱なら少しの

  ゴミでもその変化に気づくのです。


第35話 片栗粉とクズ粉
   公正取引委員会が栗せんべいについて名前に栗とついているのに栗が入っていないのは

  けしからんと言ったとか。

   さて、市販の「片栗粉」はどうでしょうか。本来の片栗粉はユリ科の植物であるカタク

  リの地下茎(鱗茎)からとったデンプンのことであります。カタクリの地下茎は白色・多

  肉のこん棒状で、多くのデンプンを貯蔵しています。それを採取したことが片栗粉のはじ

  まりになります。でも、今ではそれに代わって馬鈴薯(じゃがいも)澱粉が片栗粉とされ

  ています。

   クズ粉は正真正銘、マメ科のクズの根からとった粉です。クズの根をたたいて水に浸す

  し、その濁り汁を晒して採取します。デンブン質に富んだ粉が得られます。その昔、奈良

  の吉野郡国栖(くず)の商人がこの粉を売り歩いたことがクズの名前の由来で、今でも吉

  野葛は名が通っています。


第36話 アイスクリームとウェファース
    最近は食後に出てくるアイスクリームにウェファースがついてくるのを見ることが少な

いように思いますが、あのウェファースはなぜ添えられているのでしょうか。ウェファース

を匙代わりにするとか、ウェファースにアイスクリームをつけて食べるのではないかと言っ

た人がありますがそうではありません。アイスクリームは美味しいけど大変に冷たいもので

す。続けて口にすると冷たさで舌の感覚が変化します。そんなときウェファースを口にすれ

ば舌の感覚がもどり、再びアイスクリームの美味しさを味わう事ができるのです。アイスク

リームを食べながら適度にウェファースを食べてアイスクリームを賞味してください。


第37話 春夏秋冬の色は何色ですか。
 春は花の季節でピンク、夏は青空から青色、秋は紅葉で橙色・・・なんて考える人も
見えるかも知れません。
 古代中国より伝わる「陰陽道の五行説」によると色と季節の対比はつぎのようになっています。 色  青  赤 黄  白   黒 季節 春  夏  土用  秋  冬 「青春」や「白秋」のことばは耳にしたことがあると思います。 これは上の色と下の季節をつないだ言葉になります。 春は青色、夏は赤色、秋は白色、冬は黒色と言うことになります。 なお、土用とは季節のひとつなのです。五行説の「木・火・土・金・水」の 五つに春・夏・秋・冬の四季をあてはめようとしたのですがそれは無理なこと そこで各季節の終りの18日余りに土をあてました。それを土用と言います。 五行  木 ・ 火 ・ 土 ・ 金 ・ 水 季節  春   夏   土用   秋   冬 したがって、春夏秋冬のそれぞれに土用があります。 わたしたちは春夏秋冬と言っていますが、五行での季節は 春、春の土用、夏、夏の土用、秋、秋の土用、冬、冬の土用となります。 ついでに土用の期間が明けると立夏、立秋、立冬、立春となります。 おまけとして五行、五色、五季、方位、五味、五官、五蔵、五声、五穀、五畜などを 対比しておきます。 五 行   木   火   土   金   水  五 色   青   赤   黄   白   黒 五 季   春   夏  土用 秋 冬 方 位 東 南 中央 西 北 五 味 酸 苦 甘 辛 鹹 五 官   目   舌   口   鼻   耳 五 臓   肝   心   脾   肺   腎 五 声   呼   笑   歌   哭   呻 五 穀   胡麻 麦 稲 粟 豆 五 畜 鶏 羊 牛 馬 豚


第38話 日の出、日の入と月の出、月の入の時刻
  日の出の時刻はどのように決められているのか。「それは、日が出る時さ。」はい、そう

なのですが、日が昇る方角に山があればその高さによって日の出る時刻は変わってしまいま

す。そこで「地平線に太陽が出る瞬間」を日の出の時刻と決めてあります。日の入は「地平

線に太陽が沈む瞬間」になります。さて、それでは月の出の時刻はどうなのでしょうか。太

陽と同じように決めたいのですが月には満ち欠けがあります。そのため「地平線に月が出る

瞬間」とすると欠けた月の時は出てきた月のへりが見えません。そこで月の場合はへりでは

なく月の中心が地平線に現れた時を月の出の時刻とすることにしてあります。勿論月の中心

が見えない三日月などは月の弧から中心を割り出せばよいのです。月の入も同じです。

  さて、将来月面に人が住むようになったとき月から見る地球は満ち欠けがありますから地

球の出、地球の入の時刻はやはり中心が地平線にかかったときになるのでしょうね。


第39話 凍結した池の底は?
  冬の季節、寒波の到来とともに池や川面に氷がはるのを見るようになります。池の底にい

る魚たちはどうしているのでしょう。水温の低下とともに活動がにぶくなりますが水底で歌

にあるように「てんじょこはった」と思って春を待っていることでしょう。よほど浅い池な

ら別ですが普通の池では水面が凍っても水底まで凍ってしまうことはありません。水面が凍

っても水底はそれより水温が高いのです。池の底が凍らない秘密が水の特異な性質に依存し

ているのです。中学校の理科の勉強になりますが、水の密度は4℃が最大で、それよりも水

温が高くなっても、低くなっても密度は小さくなります。これは他の物質に見られない不思

議な性質です。水温が4℃以上あるとき冷やされた水面の水は密度が高くなり底の方へ沈み

暖かい下の方の水が上がってきます。いわゆる対流現象です。しかし、4℃に冷やされた水

は密度が一番高いので底へ沈んだ後はそれ以下に冷やされた水と入れ替わりません。池の水

面が凍り、その下の水が0℃や1℃となってもこちらの方が密度が小さく軽いため対流は起

きません。こうなると底の方の4℃の水が冷やされるのは熱伝導しかありませんのでなかな

か冷えていきません。このお蔭で4℃と低い温度ですが魚たちは凍らずにいられるのです。

もしも、氷が液体の水よりも密度が高かったら(他の物質では液体より固体の方が密度が高

い)大変なことが起きてきます。池の表面で凍った氷は重くなって池の底に沈むことになり

ます。徐々に池の底から凍りついて来ることになります。魚たちは水底から追い出される結

果になります。水の特異な性質が水中の生き物の生存にも関わっているのですね。



第40話 1=2 の証明
  1=2 ? そんなことはないですよね。でもつぎの数式の話を見てください。中学校の3

年生、因数分解を学習すればこの説明は分かると思います。

まず、

@  a = b  であるとき

A   式の両辺に  a をかけます。すると

      a²  =  ab となります。

B    つぎに両辺から  b²  をひきます。すると

C    a² − b²  =  ab  −  b²  となります。これを因数分解すると

D   ( a + b)( a − b) =  b( a − b) になります。

E    両辺を両辺に共通な ( a − b) で割ります。

F    その結果は

      a + b =  b  となります。a=b でしたから、左辺の a を b に書き換えます。

G    b + b =  b  すなわ  2b = b となります。ここで、両辺を b で割ると

H    2 = 1  となります。これで 2 = 1 の証明ができました。

さて、この証明の矛盾点はどこでしょうか。Eのところが問題なのですね。( a − b)は

a=b なので、その値は 0(ゼロ)なのです。( a − b)で割ることは 0 で割ることなのです。

如何なる数式も 0 で割ることはできません。そこに矛盾点が隠されていたのです。




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